サラダ油を加熱すると、 脳と体に悪い毒素が発生する
これまで、サラダ油に含まれるリノール酸は健康に良いと言われてきた。だが、アルツハイマー病の早期診断や神経細胞死のメカニズム研究を専門とする脳科学専門医の山嶋哲盛Drは、サラダ油は脳と体に害であると提唱する。
「サラダ油に含まれるリノール酸という成分は、200度前後の加熱によって変性するとヒドロキシノネナールという毒物を産生し、これが脳と体を酸化させ、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病、がん、アレルギー体質などを引き起こします。この毒素が脳の海馬という部分を萎縮させ、もの忘れやアルツハイマー病、脳血管性認知症の原因となります」(山嶋Dr)
海馬は、両目の奥でかつ両耳の奥のほうに位置し、「知り得た情報を一時的にストックし、それが重要な情報であれば、1カ月ほどで永遠の記憶として近くの脳に刻み込む働きを持つ」と言う。一般に、記憶力や勉強の効率アップ法のための情報などでよく語られる部分だ。
アルツハイマー病でみられるもの忘れの原因は、この海馬が少しずつさびてついには萎縮してしまうことにある。
「脳の神経細胞は、加齢とともにどんどん減少してゆくということはご存じでしょう。でもこの海馬の細胞においてだけは、一生、新しい神経細胞が生まれ続けるのです」と山嶋Drは、元気が出そうな事実を教えてくれる。一方で、「海馬は酸化ストレスに非常に弱い。さびやすいという性質があります。加齢とともに細胞はさびるので、これをどうにかしなくてはなりません」(山嶋Dr)
その海馬の酸化ストレスの大きな原因の一つがサラダ油にあると言う。 「大量生産をするサラダ油の場合、石油からつくった溶剤を用いて油をしぼりだします。そのため、有害物質や固体の固まりのロウ、においなどを取り除く目的で高温加熱処理を複数回施しています。溶剤は発がん物質なので、高温処理をしないと、除去できません。この高温処理によって、サラダ油から毒素が発生するのです」(山嶋Dr)
これらの精製工程を経ると、「常温~低温でも液状で透明度が高い食用油ができあがります。ある企業が、サラダのドレッシングに使える油という意味で、これをサラダ油と名付けたんです」(山嶋Dr)
毒素を発生する以前に、まずは精製過程に問題があったのだ。サラダ油から身を守るには、どうすればいいのだろうか。「まずは最低3カ月、大量生産された安価なサラダ油をやめて、他の抗酸化作用が高い油を使ってみてください。わりと早いうちに、脳と体がスッキリしてくる
ことが自覚できるはずです」(山嶋Dr)
山嶋Drオススメ! 健康に良い油 |
こめ油 | オリーブオイル | えごま油 | ||
「COME-YU(コメーユ)国産の米ぬかを使用、溶剤を使わずにスチームリファイニング法と呼ばれる長時間の高温加熱をしない精製法で作るこめ油。原料に含まれる有効な成分が失われず、毒素・ヒドロキシノネナールの発生も最低限。揚げ物に適し、油っぽさを感じない食感。三和油脂 ☎023-653-3021 |
オリーブジュース100%オイル(キヨエ)完熟のオリーブオイルを収穫したその日のうちに搾り、ろ過をせずに時間をかけて分離、その上澄みのオイルだけを瓶詰めしたエクストラバージン。加熱処理をしない一番搾りで、透明なガラスビンでも品質保持ができる。クセのない爽やかな味で和食にとてもよく合う。バロック ス ☎0120-55-8694 |
毎日えごまオイル毎朝ティースプーンに1杯摂ることで、もの忘れ対策やダイエットによい影響がある。酸化しやすいのが難点だが、この製品は使いきりできる分包タイプがあり、無添加のえごま油が1包4g・30袋セット。 酸化を心配せず、出張や旅にも持参できる。太田油脂 ☎0564-51-9521 |
ごま油 | ごま油 | 番外編(サプリ) | ||
純白ごま油焙煎していない生のごまを丁寧にしぼって作るため、淡黄色を帯びて透明、香りもわずか。高級天ぷら油として使用されることが多く、同社ウエブサイトでは、パンレシピも紹介されている。スーパーや小売店の棚でよく見かけるので入手しやすい。かどや製油 ☎0120-11-5072 |
九鬼太白純正胡麻油毎朝ティースプーンに1杯摂ることで、 もの忘れ対策やダイエットによい影響がある。酸化しやすいのが難点だが、この製品は使いきりできる分包タイプがあり、 無添加のえごま油が1包4g・30袋セット。 酸化を心配せず、出張や旅にも持参できる。太田油脂 ☎0564-51-9521 |
ごまセサミンごまに含まれるゴマグリナンという成分は、油の酸化を抑えて毒素・ヒドロキシノネナールの発生を少なくする。セサミンにはアルコールの分解作用もあり、飲み会の前に飲むと二日酔いの軽減も期待できる。サプリメントで補うのが便利。かどや製油 ☎0120-11-5072 |
精製過程で高温加熱処理されていない油を選ぶ
「脳や体をさびさせないためには、酸化を抑える成分の高い油を、また、精製過程で高温加熱処理されていない油を選ぶ必要がある」と山嶋Dr。具体的にまず、エクストラバージン・オリーブオイルを勧める。「オリーブオイルには、体の酸化、つまり細胞がさびるのを防ぐ働きがあるポリ フェノールが豊富です」(山嶋Dr)その働きを吸収するためには、オリーブの実のみを使用し、化学的な処理を施さず、「酸化の度合いが0・8%以下の高品質なエクストラバージン・オリーブオイルを選ぶようにする」必要があるという。最近では、オリーブの有効性分を可及的に残すために、ろ過も敢えてしないユニークな製品も出来ている。また、 「安価なオリーブオイルには、製造前の段階ですでに酸化が進んだ、傷んだ実を使った粗悪品が多い」と注意を促す。質の良いエクストラバージン・オリーブオイルを丁寧に販売する店でテイスティングをしてから購入するのが理想だ。
エクストラバージン・オリーブオイル 市場の現状と選び方 |
テイスティングが出来るお店へ行こう! |
フォムファス代官山店 購入する前にすべて味見ができるだけでなく、必要な量だけを買うことができるはかり売りのシステムを採用。オリーブオイルを買うのに最適のお店。 住所:渋谷区代官山町18-5 代官山SGビル103 ?03-6427-8717 |
<市場> エクストラバージン・オリーブオイルの判断基準は、欧州などの主要な生産国が加盟する 国際オリーブ協会(IOC)により制定されている。エクストラバージンと表示するためには、 酸度0.8%以下であること、化学的処理が施されていないなどの厳しい基準がある。だが、 日本は同協会に参加しておらず、規格の法が存在しないため、いわば偽証オイルが横行 している。まずはそれを知った上で、品質が良いオリーブオイルを選びたい。 <選び方・5つのポイント> 1. テイスティングができる店やデパートのコーナーで、高品質のオリーブオイルを試飲す る。店にアドバイスを仰ぎながら、新鮮さや栄養成分に由来する、「ピリッとした辛 みと苦みがあるタイプ」を選ぶ。 2. 1で試飲した、本物の味を覚える。 3. エクストラバージンと表示されていても、安価であれば偽証の可能性がある。製造過 程をホームページ等で調べ、精製(高温加熱処理)されていないタイプを選ぶ。「1 ㏄=10円以上」の上質のオイルならまず、まがい物をつかまされることはない。 4. 食用油は鮮度が命。1カ月以内に使いきる量を購入する。買い置きはしない。 5. 加熱調理用でも、ピュア・オリーブオイルではなく、エクストラバージンを選ぶ。ピュアとは純粋という意味ではなく、化学的処理で精製したオイルにバージンオイルをブレンドしたもの。名称で勘違いしないようにしたい。 |
外食には和食、南イタリア料理、インド料理を |
インド料理の香辛料の作用 | 和食・寿司 | 南イタリア料理・カプレーゼ | ||||
香辛料のクルクミン(ウコン、 ターメリック)は、抗酸化作用が強いことで知られている。 カレーなどインド料理はアルツハイマー病、動脈硬化対策として○。 |
刺身や串焼き、鍋物など、サラダ油の使用率が少ない和食は、店を選ぶ際の強い味方。 ただし揚げ物は避けて、天ぷらを食べたいなら良質なごま油を使う店を選ぼう。 |
高級店は、揚げ物にも上質なオリーブオイルを用いることが多い。特に南イタリア料理は、魚、野菜、ニンニク、香 草といった抗酸化作用が強い食材を豊富に使用する。 |
サラダ油の使用率が少ない料理店を見極めよう ・寿司屋 ・こだわりをもった手打ち蕎麦(天ぷらには注意) ・鍋料理 ・炭火を使った鰻や焼き鳥など焼き物の店 ・焼き肉屋 ・牛脂を使って焼くステーキ店 ・オリーブオイルを使う高級なイタリアンやフレンチ 店に「油は何を使っていますか?」と尋ねよう。返事がない、また、サラダ油という返答の場合は、揚げ物は食べないようにしたい。 |
和食派にお勧めは、ごま油だ。 「ごまに含まれるセサミンは抗酸化作用が強いので、加熱しても毒素・ヒドロキ シノネナールの発生がほかの油に比べて圧倒的に少ないという利点があります。ごまを焙煎(熱処理)していない『生しぼり』タイプを選ぶとより安心です」(山嶋Dr)
また、米ぬかから作られるこめ油は、 「植物油の中で唯一、γ(ガンマ)オリザノールという、非常に抗酸化作用が強い栄養成分を含んでいます。同時に、酸化に強いビタミンEも豊富。熱で酸化しにくい食用油なので、揚げ物料理に適していると覚えておいてください。ただし、こめ油も透明のペットボトルに入った大量生産タイプが出回っています。こめ油といっても安価なものは製造工程でやはり溶剤を使い、高温加熱の化学処理を行っています」(山嶋Dr) 加熱処理をしない方法で作られた、ビン入りで値段も高めの製品を選ぶようにしたい。
山嶋Drは、えごま油(しそ油)、あまに油も勧める。「えごま」とは「ごま」ではなく「しそ」のことで、あまに油とは、植物の「亜麻」の種を原材料にした食用油だ。その働きとは、 「リノール酸の弊害を制御するα(アルファ)-リノレン酸を多く含み、炎症や中性脂肪の増加を抑えます。便秘、動脈硬化、糖尿病、もの忘れが気になるときに摂りたい油です」(山嶋Dr)
ただ、どちらも酸化しやすいため加熱調理には向かず、ドレッシングのように、そのまま使用することに向いている。 「どんな食用油も、新鮮なうちに食べることが最重要。古くなるほど、加熱時に多量の毒素が発生します」(山嶋Dr)
「オリーブオイル」「えごま油」「あまに油」が抗炎症作用が働く
イタリア人は風邪をひいてのどが痛いときには、上質なエクストラバージン・オリーブオイルを飲む習慣があるという。その目的について山嶋Drは、 「オリーブオイルには、オレオカンタールという炎症を抑える成分が含まれています。彼らは、のどや鼻の炎症を緩和するために飲むんです。口内炎や肌荒れ、髪の乾燥や傷み対策として、その部分に塗る習慣もあります」
と説明する。
オリーブオイルの主成分は悪玉コレステロール(LDL)を抑えるオレイン酸。一方で、体内で炎症を起こす物質を生み出すリノール酸の含有量が10%以下と少ないことも知られている。
また、花粉症や鼻炎、アトピーなどアレルギー症状に悩む場合は、「リノール酸系のサラダ油をやめてください。そのうえで、オメガ3脂肪酸という抗炎症効果が望める成分を含む食材、油を摂るようにしましょう。イワシ、サバ、サケなどの青魚、えごま(しそ)油、あ
まに油などがお勧めです」(山嶋Dr)
ごま油活用術 |
天ぷら | 煮物の隠し味に | |
ごま油は抗酸化性が高いため、胸焼けがし にくくカラッと揚がることから、高級天ぷ ら専門店ではよく使用されている。香りが 気になる場合は、生しぼりタイプを使うこ とをお勧めする。 |
醤油と相性のいいごま油は、煮炊き物の香 り付けに少したらすことでコクや風味がア ップする。また、トマトのように酸味のあ る野菜や、うど、セロリなどの春野菜を塩 とごま油でナムルにするのもいい。 |
肝臓でアルコール分解に力を発揮する
ごま油は、その名の通りごまを原料として採油された食用油。ごまはタンパク質やカルシウム、ビタミン、ミネラルなど多種の成分を含んでいるが、さらに、「セサミン、セサモリン、セサミノールなどの抗酸化成分も含んでいます。これをまとめて、ゴマリグナンと呼びます。この抗酸化力のおかげで、ごま油は加熱しても毒素のヒドロキシノネナールが発生しにくいのです」(山嶋Dr)
高級な和食レストラン、天ぷら店ではたいてい、ごま油を使用している。酸化しにくいため不快なにおいがせず、香ばしいごまの香りが持続することも特徴だ。
ゴマリグナンは、認知機能や動脈硬化に有害な活性酸素を抑える働きがあるが、「体内の活性酸素の約80%は肝臓で発生します。ゴマリグナンはそれを除去するので、アルコールの分解力を高めて二日酔いを予防する働きが期待できるのです」(山嶋Dr)
そう話す山嶋Drも、揚げ物にはごま油を使い、飲み会の前にはセサミンをサプリメントで補っているという。 同時にセサミンは、 「善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らします。動脈硬化を抑制して生活習慣病を予防、さらに女性ホルモンのバランスを整えて更年期障害の改善に働きます」(山嶋Dr)
なんともありがたい成分なのだ。
植物油の中で唯一、強力な抗酸化成分のγオリザノールを含む
「米ぬかから抽出されるこめ油の成分・γオリザノールには抗酸化作用があり、 認知症だけでなく、自立神経失調症や更年期障害などを和らげるサプリとしても 用いられています」(山嶋Dr) γオリザノールはポリフェノールの一種で、自律神経の中枢に直接働きかけ、うつ、緊張、めまい、動悸、倦怠感、不眠などを緩和することが知られている。 「血行を促す善玉(HDL)コレステロールを増やして悪玉(LDL)コレステロールを減らすため、脂質異常症(高脂血症)を改善する働きもあります」(山嶋Dr)さらに、こめ油は、酸化に強いビタミンEを豊富に含んでいる。 「耐熱性と抗酸化性にすぐれ、ほかの油に比べて加熱調理に向いています」と、山嶋Drは揚げ物には、ごま油と並んでこめ油を勧める。 抗酸化性が強いので、天然の酸化防止剤として化粧品に使用されることも多い。
たっぷり含まれるα-リノレン酸の働きに注目
イワシやサバなどの青魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、血液をサラサラにすると同時に、イライラやうつ気分を改善。また、記憶力をアップすることでよく知られている。「えごま油は、DHAやEPAと同じ健康効果があるα-リノレン酸という成分を豊富に含みます。油脂に含まれる脂肪酸を分類して、これらをオメガ3脂肪酸と呼びます。α-リノレン酸は、アルツハイマー病やうつ病を予防し、ストレス対策、中性脂肪を抑え、血液サラサラやアレルギー対策にも有用です。生活習慣病を引き起こすリノール酸の弊害を抑制する働きもあります」(山嶋Dr)
α-リノレン酸は体内では合成できないので、食物から摂取する必要がある必須脂肪酸。つまり、日常的にこれを食べるようにすると日々のストレス対策によいというわけだ。「α-リノレン酸が豊富な食用油としてはほかに、植物の亜麻の種から抽出する『あまに油﹄がある」と、山嶋Drはこちらも勧めている。 「中高年だけでなく、脳の働きを活性させて仕事や勉強の効率をアップしたいビジネスマン、受験生は、1日に小さじ1杯ぐらいのえごま油、あまに油を食べることを勧めます」(山嶋Dr)